テンペラ(油彩テンペラ)画とは⑤

画材と画法によっては、5分どころか、1分あれば一枚の絵が仕上がる。

なのになぜ、あえて、この手間と時間がかかる
油彩テンペラ(古典画法)で絵を描くのか。
実は、私、大変なせっかちであります。行列とか絶対待てない(笑)

なぜ、テンペラ(油彩テンペラ)画なのか?
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人生の節目節目に、この画法では制作を継続するどころか、
もう絵の仕事から完全撤退だヨーー!!と半分諦めて、
でもしばらくすると「いや、やっぱり続けたい」と持ち直し。
周りの理解や応援もあって、絵筆を握って20年余り=30年近く。
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「ちょっと好きだから」「なんとなく描いてる」なら、もうやめてる。
続ける理由、やっぱりあります。

テンペラ画の工程やその歴史、出会ってからなど

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今までの制作に関するまとめ記事↓よかったらどうぞ♪

生卵を使った絵の具って?【制作のこと①】

え?板も作ってるの??【制作のこと②】

どうして画家になったの?【制作のこと③】

あの巨匠もテンペラを、、!【制作のこと④】

青字クリックでリンク記事に飛びます。

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母が書家だったので、金箔をすき込んだ和紙や、漆塗りの筆箱、、、

父の転勤や旅行のたびに、その地方の工芸品を買い集め。人間国宝〇〇先生のナントカ、とか

大好きだから、ショッピングに行く先も工芸センターとか渋い。

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つまり母は、手間と時間がかかったモノに大きな価値を見出してました。

「本物は古くなっても素敵なのよ」剥げた漆器を大事そうに磨きながら母のセリフ。

「本物ってなんだろ?」


プラスティックより本物の漆のお椀が美しい。

化繊より、本物の綿や麻が美しい。

金メッキより、本物の金の剥げた美しさ。


本物はずっと美しい


時間の経過を経たものは、新しいピカピカしたものが叶わない魅力があり。

そこに命を賭けてもいいくらいの絶対の美を感じたのです。

また、そこには時間(の経過)という目に見えないものが存在する。確実に。


骨董市で目にする本物の美しさ←学生の頃、大好きでよく足を運んでました

美術展で出会う、古典絵画のリアリティに満ちた美しさ。対面すると

心が震えるくらいの感動を覚えました。

(展示の大小、有名無名に関わらず、時間の経過が詰まった本物に出会うと

今でもドキドキします。多分、一時間くらいは見つめていられそう、笑)


私にとって、これ以上の美はなく、この震えるような美に、もう少しでも近づきたい

強く思ったのです。


はるか昔、レオナルド・ダ・ビンチも用いた画法にたどり着いたのは、

上記の背景、理由があります。


油彩テンペラは、樹脂絵の具と白テンペラをごく薄く重ねていくので、

絵と静かに向かい合うと、表面の色味はもちろん、そこを通過して下の色が透けて見えます。

さらに、その下の色も複雑に目に入り、、時間の経過に似た(と私は思ってる)複雑で

豊かで美しい広がりを感じます。

実際には数ミリ、いや1ミリ以下の絵の具の層ですが、

一センチ平方メートルの中に、おびただしく複雑で深くて、美しい広がりがあります。

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↑画像ではわからないのですが、こちらも実際に絵と向かい合うと

特に、うさぎの影や、花や植物の影、、透明な絵の具の下から複雑な絵の具の層が

じんわり現れて、本当に美しいです。

それでいて、頼りない弱さを感じることはなく、画面から跳ね返してくるような強さもある。

曖昧に描き進めれば、絶対に完成しない。この画法は、

絵の具の厚みやマチエールで「なんとなく雰囲気を出してごまかす」ということができない。

徹底的に自分と向き合って、全力を出し切らないと描けない、

そんな難しい画法だからこそ、人生を賭ける価値があると思いました。


現代の方こそ、見ていただきたい


ブログを読んでくださる方は、きっと毎日忙しい日々を送られているでしょう。

絵画鑑賞する時間すら惜しいくらい、お忙しい方もいらっしゃるでしょう。


でも、そんな方こそ、ぜひ、実際に会場に足を運んでいただいて

ほんの短い時間でいい、静かに絵と向かい合ってください。


そうすれば、きっと絵の奥にある豊かで美しい広がりが、

静かに心を満たしてくれると思います。


本や、映画をみた時のように、日常を離れて旅に出た時のように、

この現実世界と同時に存在する、別の世界に連れて行ってくれる。

そうして、豊かな世界に静かに身を置くと、

あなたの現実世界に戻ってきたときに、心がとても満たされているのに

気づくでしょう。


私が、全身全霊で追いかける絶対的な美が、忙しく頑張る方々の日常を

豊かにしますように。

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2020年3月に宮坂画廊さん企画の「35周年展」に出品いたします

繊細かつ堅牢な、美しい絵肌。本物の良さをぜひ実際にご高覧ください。

   画廊宮坂35周年記念 ”3号170点展” 

【日時】2019年7/16-7/27 終了しました 2020年3月に仙台(宮城)展開催いたします
【場所】画廊宮坂
  東京都中央区銀座7-12-5銀星ビル4F

丁寧に時間をかけた贅沢な作品は、目に見えない時間を閉じ込めたもの。
それが飾られた場所の空気を本物にします♫

オーダー絵画、お描きいたします
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イタリアで美術を学んだ画家と、楽しい学びの時間

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