乙女と落ち武者

油絵セットを買ってもらった
中野の画材屋さんには
その後も時々通った。
 店主のオジサンは、とても正直に自分の意見を言う人で、
 自分で描いた絵をみてもらったが、
「いいね」とか「う〜ん、よくないね」とか 
実に率直に感想を述べた。
 その価値観は、商売っ気と全く違う所にあるようだった。 
(私がビジュツを好きな理由の一つは、
この率直さ。本音が飛び交うので、
とても楽なのである)

 ある風の強い日、画材やの前を通ると、 そのオジサンが、店の前のワゴンの整理をしていた。 
「こんにちは!」と声をかけようとしたその瞬間、
 ビュウウウウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ひときわ強い風が吹いた。
 そのとき、オジサンが乙女となった。
 いや、正確に言うと、乙女の様な
ロングヘアーに変貌したのだった。 
いや、もっと正確に言うと、貫禄ある
頭頂部はそのまま光り、
 側頭部から生えた白髪のロングヘアーが
風にたなびいたのであった。
 それまで無風の店内では、
頭頂部の毛の固まりに
不自然さを感じてはいたが、
 まさか、地毛をまるめ、ただのっけていた
ー自家製かつらーだとは気づかなかった。

 スローモーションのように
風にたなびくオジサンのロングヘアーは、 
太陽の光を浴びて、キラキラと
それはそれは美しく、、、、

、、、、時間が止まったかと思った。 
しかし、風がおさまれば、
乙女から落ち武者に戻る。
 落ち武者のオジサンは、乱れた髪をそのままに
ワゴンをそそくさと直した。 
すばやく店内に戻って行った、
落ち武者のオジサンにいつもの威厳はなく、
 高校生の私でも、
今は声をかけるべきでない、と思いその場を立ち去ったのでした。

丁寧に時間をかけた贅沢な作品は、目に見えない時間を閉じ込めたもの。
それが飾られた場所の空気を本物にします♫

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イタリアで美術を学んだ画家と、楽しい学びの時間

コメント

葡萄山
わははっ!
わが父も、バーコード頭、波平頭でーす。
物心ついた頃から、すでになかった。それで、幼稚園に行って、「なぜ友達のお父さんには髪の毛があるのに、お父さんにはないの?」はっきりと爆弾意見をぶつけて、父の心を粉々にしまいました。成人男性は、お父さんになると髪の毛は無くなるもんだと思っていたんです。その後、アデランスに相談したそうですけど、高価すぎてとても手に入らない価格で父は断念したそうです。記憶はないのですが、私はそれ以後、髪の話は父の前ではタブーと思ったらしく、何も言わなくなりました。
でも、気になって仕様がないのです。今は、こっそり禿げ予報を出せるくらいです。職場で、上司同僚の頭を見ては、観察しにやにや笑いながら、「あー、もう、ここまで来たのね。」「最近のあの懸案事項ですっかり薄毛になったぞ。」と楽しんでいます。(」o^∀^)」

白川美紀
葡萄山さん、いつもコメント有難うございます!
頭髪はデリケートな問題だけに、難しいですよね。
でも、風にたなびく画材屋さんのロングヘア〜、太陽の光をキラキラ反射して、それはそれは美しかったです。
スローモーションで見えましたから、、、。
時々、地毛とまったく色の違うカツラを着けている方見ますが、
あれも厳しい、、、。
そういう意味では、地毛製カツラの方が、まだ自然かも
と思う今日この頃です。
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