「梟(ふくろう)の絵を描いてみませんか?」突然、Tさん*が言った。
「梟はギリシャ神話で女神アテナの使いと言われてるし、
ローマ神話では女神ミネルバの従者。 つまり、学問、書物の象徴なんですよ。」
そんなイメージとは!
梟に関する 熱い想い、知識を聞くうち、私もドキドキしてきた。これは面白そう。
「ぜひ、描かせてください!!!」
そして梟の絵を描かせていただくことになった。
とりあえずデッサンから描くことにした。が、本物を見る機会はなかなかない。
梟の写真集、梟カフェ、梟のオブジェ、
お祭りで「梟に触れるコーナー」動物園、 フクロウ型のクッキー(笑)に至るまで、
とにかく見て調べた。
絵は、インプットがないとアウトプット=描けない、できない事を思い知らされる。
デッサンでつまづく
もっと「知る」には?と 知恵を絞り、梟の剥製(もどき)を入手。
デッサンを何枚も描いたがリアリティが全くでない。
あ!顔が作り物っぽいからリアリティがないのだと気がついた。
そこで、写真集を何冊も入手。動物園で撮影した画像を何枚も組み合わせて、絵のイメージを膨らませる。剥製もどきを見ずにデッサンしたら、ようやく構想がまとまってきた↓
何枚も描いて形がつかめてきたころ。
ようやくデッサン→本画へ進む
夥しい枚数のデッサンをもとに、油彩テンペラの本画へ入る。
が、梟、、やはり難しい。Tさんの要望は「背景はとにかく暗く描いてくださいね。あとはお任せ」だった。お任せ=中途半端な作品にはしたくない。力めば力むほど深みにハマる。
↑3作目は、トリミング後、時計に生まれ変わる@東京(浅草)のヴィラへお嫁入り。
4作目は完成した。が、Tさんの要望のとにかく暗い背景に近づけようと思い直し。
↑こちらも@別の東京のお客様のもとへ。
2作目までは試作程度に思っていたが、さすがに5作目が行き詰まって
自分が情けなくて、アトリエで悔し涙が出た。
制作に夢中になると、他にエネルギーが回らなくなる。
お風呂をうっかり水風呂で満タン、5回、、 いや、もっとか。
栓をぬいたまま、お湯をいれること3回。
ちびこ(娘)のお迎えを忘れ、園より電話が1回。
フライパンを焦がして、買い換えること3回。
セーターを裏返しで、外出すること2回。
エネルギーが絵に集中する分、 周り、特に家族には迷惑もかけっぱなしだ。
その上、夥しい時間と高価な絵具を費やしても、プロなのに描けないなんて!
ふらふらと近所のカフェに行くと 「暗い顔してどうしたの!?」 店主が驚いて聞いた。
問われるまま「絵が煮詰まって アトリエで泣いてました、、」
「そう、大変だね。」しんみりした言葉が返って来ると思いきや
「あははははぁぁ〜!!!」店内で常連さん&店主の爆笑の渦がおこった。
(大の大人が泣いていたのが相当おかしかったらしい。)
地獄の三丁目の気分から、みんなの爆笑のおかげで 我に返った。
(今でも、そのことで笑いの渦が起きる。)
切り替えて7枚目!!
初めのオーダーいただいてからかなりの年月が経っっていた。
経過をTさんに報告すると「好きなようにやってください」 と寛容な返事をいただいた。
おかげで、 頑張ろう!と前向きになった。
6作目はさすがに筆が早く進んだ。開き直ったのも良かったらしい。
途中で止まっていた作品も、パズルのピースが カチッとはまると一気に完成に向かうように、
仕上げに向かっていった。
7作目でようやく完成する
まず、構図に納得いかなくてトリミング(板ごと絵をカット)した小品が 完成。
それをもとに、一回り大きなF8号サイズを進める。
6作目↑@宮城のお客様のもとに。暗い深い背景にオイラーの公式*が似合う。
*数学史上「最も美しい公式」
フクロウは、もう見なくても描けるくらいなっていた。
そして、さらに一回り大きいF10号サイズを仕上げる。
ひたすらアトリエにこもり3ヶ月間。
画家魂というかTさんへの私の誠意だと思って7作目を描き上げた。
エネルギーを振り絞り、ようやく完成した作品がこちら
こんなに描いたテーマは、この時が最初で最後かと。
いただいたテーマに全力でお応えして、成長させてもらった。
ありがとうございました!
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【幸福指数と黒】
53×45.5㎝
板・油彩テンペラ(混合技法)
sold out
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記憶に残る一枚。
今はタイにあるかと(?)。またこの絵に会いに行けたらよいなあ。
丁寧に時間をかけた贅沢な作品は、目に見えない時間を閉じ込めたもの。
それが飾られた場所の空気を本物にします♫
オーダー絵画、お描きいたします
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